ゆう@テ天音理心流です。
今日は書評です。
独学で英雄ポロネーズをマスターした、広瀬宜道さんという方の本を読みました。
広瀬さんは、高校2年の時、体育の時間に
体育館にあったピアノで友人の弾く「エリーゼのために」を聞いて、
ピアノに目覚めちゃったらしいです。
さらに胸キュンなエピソードとして、
S君なるその友人と広瀬氏は、
ピアノを通じてお互いに成果を披露しあって友情を深めているのです。
これにやられました。
「ピアノの森」のカイ君と雨宮君を思わせる、少年の友情。
なんかいいですね。
楽器との出会いって、その最初の刺激が鮮烈であると、
その瞬間の感動や驚き、憧れを原動力にして続いちゃうってことありません?
わたしは、、、そもそも
楽器を弾ける人間のことをバカにしていたフシがあるのですが、
(演奏者より「作曲家」が上で、それをどう弾くか、なんていうのは、もうDNAが決まっている種からどんな花が咲くか、みたいな話で、植物そのもののDNAを作る作曲家の方が崇高な仕事であり、後段階である「どう弾くか」みたいなことは、どうでもいいことだ、と考えていた)
それでも、ジャズピアノと出会った時の感動は忘れません。
「ブラウンシュガー」という、バンコク老舗のジャズバーで、ピアニストがおしゃれなコードで曲を弾き、えんえんとソロを展開してゆく様子に、心底感動してしまい、
その彼に「ユーアージーニアス!」と言ったことを覚えています。
まあ、もちろん、ジャズピアノというものが存在し、CDなどでは聞いていてすごいな、とは思っていたのですが、そのCDクオリティの演奏を、生身の人間が目の前でやってみせるという衝撃がすごかったのです。
わたしは、その頃は、
坂本龍一などの作品、クラシックピアノの練習曲、ポップスのコード弾き伴奏、などをやっていて、正直、ピアノに飽きが来ていたので、その一撃は鮮烈で、一気に情熱がよみがえりました。
本書の独学メソッドについてのわたくしの見解
正直に書くと、広瀬さんのピアノのやり方は、自分のやりたい音楽には向かないと思いました。
私のはクラシックじゃないからね。
でも、本書の独学メソッドはユニークで、納得できる点も多々ありました。
その中でもこれはたしかに、なこと。
1.左手→右手→両手、と順をおって練習する。
2.右手を練習する時は、なるべく鍵盤を見なくても弾けるようにする。
これなんだけど、理由は、「左手は音数が少ないけど跳躍が多いので、見ないと厳しい」「鍵盤はかなり横に長いから、全部見るのはむずかしい。そこで視点を固定することが必要」ということのようです。
その理由を聞いて、なるほどねえ、、、と感心しました。
また、「両手合わせ」の前に、メロディを口で歌って左手と合わせる、というのもいいと思いました。
ただ、ある一つの曲だけをやるなら有効だと思うんですが、
「徹底丸暗記」を推奨している(p24)
ようなので、そこは自分には必要ないかな、と思いました。
まあ、批判ではないのですが、、、
「覚えた」ものは
遅かれ早かれ「どうやっても忘れる」と思うのです。
「アタマの中のメロディ」の音がドレミ、の何の音なのかわかる。
背景になってるコーの機能がわかる。
そんな「音感」を身につける方がジャズ、ポップスには必要です。
楽譜を見ないでも、1時間とか弾けちゃう人。
これ(音感)、出来てるはずです。
普通の人間がそんな1時間分の大量の音符を記憶できるはずないし、出来てる人は「鼻歌を歌うようにして」ピアノの鍵盤を使って再現しているだけだと思うのです。
しかし、この方法で独学で「英雄ポロネーズ」をマスターした広瀬さんのメソッドは、素晴らしいです。本人の熱意や才能もあったのでしょうが、きっとクラシックピアノの練習法として理にかなったすぐれた方法ですね。
それから、著者は最初の曲である「エリーゼのために」は
独学の力技でスタートしていますが、
徐々に普通の練習もしていますので、
力技だけのメソッドではないことを付記しておきます。
ピアノサークル。ピアノ教室。「好き」というエンジンはすごい。
広瀬さんのすごいところは、
「ピアノの情熱が続くためには、一緒に刺激しあえる仲間の存在が必要」と考えて、ニフティの掲示板(時代を感じます(笑))でサークルを主催したことです。
わたしは海外在住でそういうことが困難な環境なので、、、
うらやましい話です。
サークル募集は、かなり反応がよかったそうです。
しかも、趣味サークルのはずが、上手な人ばかり集まってきたらしい(笑)
それも困りますね~。
自分も、何か音頭を取って、チーム的な動きが出来ればいいのですが、、、
何か考えたいところです。
そして、広瀬さんはピアノサークルのメンバーとの実力差を痛感して、ピアノ教室に行くことにしたようです。
そして、、、ピアノ教室に行ってみて「ハノンやツェルニーで基礎を身につけろ!」式のレッスンが辛くなり、数ヶ月で辞めてしまったようです。
この辺の「愉快でない体験」を赤裸々に書いていたのが、妙にリアリティがあって読んでいて、わかるなあ、、、と感じました。
これからクラシックピアノをやろうか悩む人は読むといい
おとなのピアノ 独学のすすめ 広瀬宜道(著)
間違いなく良書です。
「教材について」とか「ピアノの手を作る」とか、クラシック系の人が読むと参考になりそうなことも書いてありました。
明るく、ユーモアをまじえて書いている文章も読みやすいですし、そこは著者のお人柄が反映しているのでしょうね。
不思議とやる気にさせてくれる1冊でした。
では、今日も最後までお読みくださいましてありがとうございました。